御機の初 東西の名と穂虫去るアヤ③

しかるのち いさわのみやに
はべるとき きしゐのいなだ
ほをむしに いたむおなけき
あるかたち つぐるいさわの
ををんかみ あまのまなゐに
みゆきあと たみのなけきに
むかつひめ いそぎきしゐに
ゆきひらき たにきにたちて
おしくさに あふぐわかひめ
うたよみて はらひたなえは
むしさるお むかつひめより
このうたお みそめおまてに
たたつませ おのおのともに
うたはしむ いなむしはらふ
わかのましない

その後ワカ姫が成長してイサワの宮(三重県伊勢市付近)にお仕えしている時、キシヰ邦(和歌山地方)の稲田でホヲムシ(蝗・いなご)の大量発生があり、稲穂の生育が悪化しました。
嘆き苦しんだ農民の使者が状況を伝えるためにイサワの宮にやってきましたが、あいにくアマテル大御神は天のマナヰ(真名井/京都府宮津市)に行幸された後で不在でした。
代わって被害の状況と民の嘆きを聞いたアマテル大御神の正后セオリツ姫はワカ姫を連れてキシヰ邦に行きました。
二人は田の東に立ち「ヒアフギ(桧扇)で扇ぎながらワカ姫が祓いの歌を詠むとホヲムシは徐々に稲から離れて始めました。
そこでセオリツ姫は二人を中心に三十人の侍女を左右に振り分け立たせ、声を合わせて歌を歌わせます。
それは稲虫を払うワカのまじない歌でした。

たねはたね うむすぎさかめ
まめすめらの ぞろはもはめそ
むしもみなむし

(訳1)田や畑に生うる大麦・小麦・ささげ・大豆・小豆等の穀物や、稲の穂も葉も食べ尽くしてしまってはいけない。虫だってみんな同じものを食べている仲間ではないか。

(訳2)田や畑を耕し土壌を肥やしてより多く収穫しようと、懸命に働く女たちの、稲穂や葉を盗み食いしてはいけない。虫でもそれくらいの良心を持ち合わせているだろう。

くりかえし みそむそうたひ
どよませば むしとひさりて
にしのうみ ざらりむしさり
ゑおはらひ やはりわかやぎ
よみかえる ぞろにみのりて
ぬばたまの よのかておうる
おんたから よろこびかえす

この歌を繰り返し三百六十回、声を合わせて歌わせたところ、稲虫は西の海の方へ飛び去って行きました。
こうして穢(エ)を祓ったので、稲は生気を取り戻し、元のように若々しく蘇り、その年の稲は大いに収穫できました。人々はこの喜びをセオリツ姫とワカ姫に返しました。

ムカツ姫とは、中宮セオリツ姫ホノコの事。アマテル大御神の名も出てきましたね。
ここで一番大事な事は稲虫を祓う歌。
和歌は基本 5・7・5・7・7の31音ですが、ここで初めて5・7・6・7・7の32音の歌が出てきました。
一章の最後にその理由も出てきますがこの32音がとても大事な様です。
日本人なら誰でも知ってるあの歌も32音ですね。

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