御機の五 和歌の枕詞のアヤ①

もろかみの かみはかりして
ものぬしが まくらことはの
ゆゑおとふ もろこたゑねは
あちひこが これはみそきの
ふみにあり もろこふときに
おもひかね これときいわく
ふたかみの おきつほにゐて
くにうめと たみのことはの
ふつくもり これなおさんと
かんがゑて ゐねななみちの
あわうたお かみふそよこゑ
いさなぎと しもふそよこゑ
いさなみと うたいつらねて
をしゆれは うたにねこゑの
みちひらけ たみのことばも
ととのゑは なかくにのなも
あわくにや

神はかりの議場で大物主クシキネ・オオナムチが質問しました。
「和歌の枕詞はどの様に出来たのですか?」
誰も即答できなかったのですが、アチヒコ(オモイカネ)が答えました。
これは「禊の書」に書かれています。
諸臣が是非聴きたいと言うので、アチヒコは説明を始めました。

イサナギ・イサナミの両神は国の再建に向けて法整備を済ませ、世継ぎが生誕すると「オキツの宮」に落ち着かれました。そこで改めて国家の進むべき道を模索されたのです。

当時は方言や個人訛りがひどく、天神の勅すらも国の人々に十分に伝えることが困難で、言葉が通じないために行き違いや紛争も絶えませんでした。そこで両神は言語と発音を標準化して人民に教育を施すべきと考えました。

本来の日本語は四十八音で、その中に母音を五つ含んでいます。この四十八音を国中の人々が正確に発音し、聞き取れる様にするため、教育に効果的な「ア」から「ワ」まで歌い連ねたアワ歌を考え出しました。

五七調のリズムは日本語の表現に適し、四十八音がぴったり収まります。
前半二十四音をイサナギが、後半の二十四音をイサナミが続けて歌い聞かせる方法をとりました。

人々は楽しみながら聴き覚え、自然に標準の発音が身につき、誰とでも話が通じる様になったのです。
このアワ歌の発音は元々ナカ州(近畿・山陽地方)の人々の標準的発音でした。だからアワ歌の普及によってナカ州はアワ州とも呼ばれる様になったのです。

第一のアヤに出てきたアワ歌の成り立ちが書かれています。枕詞はなんとなく和歌の飾り的なものでしかないと思っていましたが、章のタイトルになるくらいですから、色々深い意味がありそうですね。

0コメント

  • 1000 / 1000